9.29.2008

『飯田の宝』・・・まちかど博物館

 城下町である飯田には、高度な技術をもった職人さんが何人もおられます。
 生活に必要な物は簡単に手に入り、使い捨てにしがちな現在。本物の職人さんやていねいに手作りされた『もの』に触れることはなかなかありません。
 平成18年度より飯田市教育委員会では、
① 地域の伝統工芸や職人さんの生き様に触れ、飯田のよさを再発見してほしい。
② 親子で職人さんに弟子入り体験させてもらい、楽しみながらやり遂げることで、個々(親も子も)のよさを発見し、親子のつながりをより深めてほしい。
 という願いをもって『小学校高学年 親子職人体験講座』を開催してきました。
 ご協力いただいたのは、

平成18年度
★ いながき工房(紬・草木染め) 稲垣昭吾さん







★ 牧島刺繍店(ミシン刺繍)   牧島 隆さん







★ 吾妻屋曲物店(曲げ物)    小笠原達夫さん









平成19年度

★ 金山布団店(ふとん)     松澤登喜子さん







★ 綿屋提灯店(ちょうちん)   原 章二さん







★ 田中裂き織り工房(裂き織り) 田中百合子さん









 の6人の職人さん方です。

 飯田が『人形劇フェスタ』で活気づく8月始め、6軒の工房や店頭には、『まちかど博物館』の看板を設置させていただきました。これは、昨年度公募で飯田長姫高校美術部の小松さんがデザインしてくださり、阿智村で工房 菜やを営んでおられる水上雅彦さんご夫妻により、自然の木を生かして丁寧に作られた看板です。
 道ゆく人に「これは何の看板かな?」と興味を持ってもらい、『飯田の宝ともいえる職人さんの技術と精神』がそこにある事を知ってもらいたいと思います。今後も親子体験の講師や見学等でご協力いただける職人さんを募集し、ご協力いただき、飯田の良さを広く伝えるとともに、いずれは飯田に帰ってきて地元をもり立ててくれる子どもたちの“育ち”にお力添えをいただきたいと思います。

 今年度の親子体験講座第一弾は、10月5日から行われる『裂き織り体験』です。続いて2月に『座布団づくり体験』3月に『提灯づくり体験』と、普段なかなかできない体験が用意されています。小学校高学年の子どもさんとお家の方、時間を作って『手仕事の達人にいざ弟子入り!』してみませんか?

 まちかど博物館マップはこちら

9.26.2008

下伊那農業高校「ひさかた御膳作り体験」事前学習

 昨年度より、「高校生伊那谷体感プログラム」として下伊那農業高校アグリサービス科が、下久堅柿野沢地区の『ひさかた御膳作り体験』を行ってきました。

 普段、地域から少し距離を置いてしまっている高校生に、生まれ育った地域の自然や文化などの良さを再発見してもらうためのこのプログラム。家庭や学校では、ややもすると思春期特有の反発をみせる高校生にも、理屈ぬきで地域や将来を考えるきっかけになってくれると思います。

 今年度は80名の生徒が、10月4・5日に柿野沢区民センターに於いて、五平餅・そばサラダ他を地元で取れた食材を使って調理します。当日の体験がより深まるよう、9月11日に事前学習が行われました。
 まず柿野沢集落営農代表で、地域づくり活動として“手漉き和紙”“県外からの農業体験・教育旅行の受け入れ”等で活躍されている宮内博司さんから、柿野沢地区地域づくりの経過をお話していただきました。
 ご自身も下伊那農業高校出身ということで、学校や生徒への思いは熱く、校庭でさつま芋・馬鈴薯を作り、暖房用の薪をせいたを背負って集めに行った60年前の下農の様子をまじえ、
 「自分は下農で勉強させてもらった事に誇りをもっている。」
 「苦しさに耐えられる人になって欲しい。自分で自分を鍛える事が大切。」
 「長くやる事に意義がある。今が大事!努力する時はきっちり努力して、人とのつながりを是非学んで欲しい!」
 と、人生の先輩として、穏やかな口調の中に思いを込めて語っていただきました。

 戦時中留守を守るご婦人らが、「共同炊事」でライスカレーを作り、地区の人々がそれをもらいに来て、まさしく「同じ釜の飯を食った」のが柿野沢営農活動『ひさかた御膳』のルーツだそうです。
 「一人がいくら頑張っても一人は一人。五人十人、農家・非農家が力を合わせて行ってきた積み重ねが認められ、『キラリと光る農業賞・県知事賞』をいただいたり、外からも注目され“やると報いがある”ことでより意欲的にやってこられた。お金には換えられない価値がある。」
 と、地域の皆が協力して現在まで継続してこられたことが、宮内さんにとって大きな財産となっているようです。

 婦人部代表の内山恵美子さんは、「おばさんたちは、楽しんで料理をしとるだけ。当日は“どうするの?”“どうやるの?”って声をかけてな。そして、せっかくだでおいしい物を作りまいな!料理は作る人が、好きな人や大切な人に「食べさせてやりたいな~」と思って気を遣って作るもの。食べる人も「おいしい!」と言ったり「もう少しこうしたら…。」とアドバイスしたりして、互いに気持ちのいい気の遣い方をしたいな。」と、料理することへのありのままの思いを生徒に元気に伝えてくださいました。

 お二人の話を静かに聞いていた生徒の皆さん。当日は、婦人部の方々と直接会話をしながら料理を作っていくことでしょう。それぞれ、どんな表情を見せてくれるのか今から楽しみです。

9.25.2008

『西中チャレンジウィーク』シリーズ⑧ 「緊張感あふれる職場の中で・・・旭松食品㈱」

 凍り豆腐、即席味噌汁、即席春雨スープ、そして納豆といえば・・・
 2年生K君とNさんの2人が体験させていただいたのは、駄科にある「旭松食品㈱」です。

 生徒たちの様子を見る前に、最初に工場長さんたちに5日間の体験メニューをお聞きしました。

 初日、はるさめの異物混入検査。
 2日目、袋工程。スープ等のカウント作業。
 3日目、梱包用ダンボール作り。
 4日目、ライン業務(スープ、はるさめの投入)
 5日目、ライン業務(スープ、はるさめの投入)

 お聞きしただけで、「異物を見落としてはいけない。」「数を間違えてはいけない。」「投入漏れがあってはいけない。」という緊張感ある仕事が与えられていることを感じます。
 お話の後、工場内に案内していただきました。帽子にマスク、上下白衣、長靴と全身白づくめでエアーシャワーを通り、手をアルコール消毒・・・入念な除菌をしての入室で、更に緊張感が高まります。
 中に入ると、従業員の皆さん全員が同じ格好をしていました。中学生がどこにいるのかわかりませんでしたが、案内されてたどり着いてみると「はるさめスープ」のラインのところで周りの従業員の皆さんの中に完全に溶け込んで作業をしていました。

 2人が行なっていたのは、
 「ラインの流れに遅れないようにカップをセットする作業。」
 「製品が梱包されたダンボールを、次から次へと積み重ねていく作業。」
 どちらも根気と体力が必要な仕事です。流れを止めるわけにいかないため、とても会話を交わしている余裕はなさそうです。2人は、「これをここに積んで!」「次はこれやって!」と要所要所に飛ぶ従業員の方からの指示に素早く反応し、テキパキと働いていました。

 そして、とうとう5日間の終わりの時間がやって来ました。別室に移動し、最後の反省会です。
 今回2人は、体験先の希望は業種を言っただけで、旭松さんを直接希望したわけではないとのことでした。そこで、
 「2人は旭松食品さんを知っていましたか?」と聞くと、間髪入れずに
 「もちろんですっ!!!」と大きな声で返事が・・・
 愚問を発してしまい、「失礼しました。」という感じです。

 続いて5日間の感想を聞くと、
K君 「大変だったけど、いろんな仕事が出来て退屈しませんでした。工場に来てみたら外国の人が大勢いて驚きました。3日目くらいが一番苦しかったけど、いろいろ話をしているうちに周りの人たちとお友達になれてうれしかったです。」
Nさん 「最初はミスしたらどうしようという不安があったけど、頑張ろうって自分に言い聞かせていました。私は、コミュニケーションを取ることが苦手で、まして外国の方が大勢いたので戸惑いましたが、みんな日本語が上手でとてもフレンドリーでよかったです。3日目が終わって帰ると足がパンパンになってたので、お風呂でマッサージをしました。」
 2人とも一言一言がはっきりしていて、とてもコミュニケーションが苦手な生徒には見えません。

 そして、これからのことについては、
K君 「一つ一つの製品にたくさんの人の手が関わっていることがわかりました。これからは、食べ物を残したり、忘れ物をしたりしないように心掛けたいです。」
Nさん 「私は面倒くさがりなので、今回の体験を通じていろいろなことに積極的にがんばりたいと思うようになりました。」
 こんな決意表明で締めくくりとなりました。
 2人とも5日間の体験を終え、身体はほとほと疲れきっているはずです。なのに、従業員の皆さんへの最後のあいさつや会社を出て行くときは、満面の笑顔で目が輝いていました。

 連続5日間という職場体験学習は、生徒たちにとって全く経験したことのない事を全く知らない人たちに囲まれて長い期間行なうわけですから、疲れて当たり前。肉体的にも精神的にもとても過酷なはずです。
 それでも最後に笑顔や目の輝きが生まれるのは、感動や達成感を味わったからでしょう。その感動や達成感は、恐らく本物の体験をしなければ生まれるものではないと思います。

 シリーズでお伝えしてきました『西中チャレンジウィーク』は、今回で終了となります。
 ほんの短い時間でしたが、何人もの生徒さんたちの様子を取材させていただく中で感じたこと。それは、「本物の体験」「リアルな体験」が、子どもたちを確実に成長させてくれるということでした。

9.24.2008

『西中チャレンジウィーク』シリーズ⑦ 「終わってしまうのがさびしい・・・小林製袋産業㈱」

 飯田市北方にある果実袋の製造会社「小林製袋産業㈱」。2年生I君の体験先となったこの会社は、地元農家の方には馴染みの深い伝統ある会社です。

 工場の中にお邪魔すると、大きな機械がいくつも動いていました。その工場の奥の方にある「ブドウ用の袋」を製造している工程のところでI君が働いていました。
 I君は、黙々とダンボール箱に出来上がった袋の束を詰めています。従業員の方からの細かな指示もなく、どんどん一人で詰めていきます。そして袋を詰め終わると、次はダンボールの梱包作業。機械でPPバンドを巻く作業に移ります。
 機械の中から「ビューン!!」と勢い良く飛び出してくるバンドを、一瞬にしてダンボールに巻きつけ、熱を加えて止める作業ですが、I君はいとも簡単に次から次へと梱包していきます。さすが5日目ともなると、どんどん一人で進めていけるんだなぁと感心します。
 しかし、I君が梱包したものがそのまま「商品」として市場に出て行くわけですから、失敗は絶対に許されない仕事です。こんな重要なポジションを任されたI君。その仕事をしている姿から緊張感が伝わってきます。

 I君に担当者として付いていていただいた従業員の方から、
 「初日に比べたら、自分で進んで動けるようになったし、何よりあいさつがしっかりできるようになったよ。」といううれしい言葉もありました。
 一段落したところでI君に少し手を休めてもらい、お話を聞きました。
 「初日は少し不安もあったけど、どんな仕事が待っているのかなぁという楽しみの気持ちもありました。一番疲れたなぁと感じたのは3日目くらいでした。1日中立ち仕事だったので本当に疲れました。でも、周りの従業員の皆さんがいろいろ話しかけてくれたので、とてもうれしかったし楽しかったです。今も疲れはあるけど、今日で終わってしまうと思うとさびしい気持ちです。」
 そして、この体験を通じて一番勉強になったことを聞くと、
 「一つ一つの袋がとても大切に作られていたので、物を大切にしなきゃいけないと思うようになりました。」
 その表情や言葉からは、疲れを乗り越えた充実感や達成感がにじみ出ていました。終わってしまうことがさびしいと思えるような体験を、彼は一生忘れることはないでしょう。

『西中チャレンジウィーク』シリーズ⑥ 「お客様の気持ちになってみる・・・卑弥呼サティ店」

 美容室で職場体験をしたCさんは、カットしたお客様の髪を掃いたり、準備や片付けの手伝い、タオルの洗濯、またお客様との接客では雑誌やドリンクを出すなどの体験をさせていただいたそうです。
 取材に伺ったときは、「お客様の気持ちになってみる」体験で、ちょうどお店のスタッフに髪をカットしてもらっているところでした。
 「服装もきちんとしていたし、テキパキと仕事をこなしてくれました」とスタッフの方。
 Cさんは、今回の体験で1番感じたのは、「やはりあいさつは大事だな」ということだそうです。

 美容師の仕事に興味を持っていて、自分から希望しての職場だったとのこと。実際に美容師の仕事に触れてみて、立ち仕事で大変だけど面白そうだな、という感想をもったようです。
 店長さんにお話を伺っていたところ、最近の子どもたちに少し気になることもあると話してくれました。
 「自分から動いてほしいと思う時や、注意したい時に、どう伝えたらいいのか、迷ってしまう事があります。きちんと返事が出来ない生徒さんもいます。」と。
 受入れていただく事業所さんならではの悩みをお聞きすることが出来ました。

 子どもたちのことを真剣に考えていただいていて、大変ありがたいことです。地域で子どもたちを育てていくことは、子ども達を成長させると共に大人も一緒に成長していくのだとあらためて感じさせていただきました。

9.22.2008

『西中チャレンジウィーク』シリーズ⑤ 「事前学習が役に立った・・・キラヤ竜丘店」

 B君は、白いエプロンと帽子をかぶり、出来上がったばかりの惣菜のパック詰の作業と、値段つけをしていました。取材の時間がちょうど昼近くだったこともあり、皆さん忙しそうに、手際よくテキパキと惣菜を弁当箱やパックに詰めています。
 そのなかで、B君も「次は○○してね」とのお店の人の指示に、機械にもすっかり慣れた手つきで手早くラップをしたり、値段付けをしています。忙しそうに働くお店の方の後について、商品を店頭に並べたりもしていました。見栄えよく商品を置くこと、次に作業する人がやりやすいよう配慮することを教えてもらったりしていました。

 B君は、「少ない商品を多く見せるよう陳列するのが難しかったです。あいさつの大切さも学べました。事前に聞いたガイダンスのなかの、『お辞儀の仕方』が役に立った。」と話してくれました。

 お店の人は、「よく働いてくれますよ。最初はパック詰のラップの巻き方がちょっと難しかったみたいだけど、しっかり出来るようになりました。」と笑顔で話してくれます。

 5日間の体験では、惣菜のほかにも野菜のパック詰や商品の陳列作業もさせていただいたそうです。副店長さんにお話を伺ったところ、「一生懸命働いてくれとるに。あいさつ?ちょっとまだ大きい声が出んかな(笑)。」とのこと。
 お店の方達の、お客様を大切にした丁寧な対応や笑顔に、B君も働く事の楽しさと厳しさを知ったことと思います。

9.18.2008

『西中チャレンジウィーク』シリーズ④ 「人に食べてもらうには、食べ物を知る・・・インド料理クリシュナ」

 美味しそうなカレーの香りが漂っている厨房で、西中の女子生徒Aさんが、ジャガイモの皮むきをし、その隣で店長さんがインド料理でカレーと一緒に出されるナンの生地をこねています。
 見ると、美味しそうなカレーが入った鍋が2つ。家で料理をほとんどしないというAさんは、
 「最初から最後までカレーを作ったのが初めてだったので、難しかったけどうれしい。」
 と話します。カレーは、店長さんに教えてもらいながらAさんが作り上げたとのこと。なかなかの出来栄えです。

 今回の職場体験では、「人に食べてもらうには、まず食べる物を知る事」との店長さんの考えのもと、お店の裏にある畑で、Aさんは耕運機を使って畑作業もさせてもらったそうです。
 Aさんの働きぶりについては、「最初と比べれば要領が良くなったし、言われなくても行動できるようになった。先日ちょっと頑張りすぎてダウンしちゃったみたいです(笑)」と振り返ります。

 Aさんへの「体験のなかで1番難しかったことは?」との質問に、横から店長の「おじさんとのコミュニケーションだよね。(ご本人談です!)」のツッコミが入ります。
 「働く事はつらい事ばかり。でも自分が苦労した分、他人を楽にさせられる。それが仕事。」
 と話す店長さん。こんな店長さんのもと、Aさんはきっと何にも替えがたい体験ができたものと思います。
 カレーのいい香りと店長さんの人柄に触れ、今度はこのお店に客として来ようと思いながら、次の取材先に向かったのでした。

9.17.2008

『西中チャレンジウィーク』シリーズ③ 「コミュニケーションを取れるよう再挑戦・・・お宿 秀の家」

 知久町2丁目にある『お宿 秀の家』

 街中の喧噪から少し離れ石畳を進みます。カウンターと向かい合わせの席が数個。ランチをいただきに常連さんらしきお客様。

 ジャージ姿に黒いエプロンを付けた飯田西中学校2年のD君とK君。お客様から注文を受け、ランチを運びます。「水をください。」とお願いすると注ぎに来てくれ、他のお客様の水の減り具合にも気を配ります。その動き方があまりに自然でどことなく爽やか。とても慣れている様子だったので「お家は何か商売をやってるの?」と聞くと「いいえ。」とD君。二人ともあまりお喋りは得意そうではありません。食後のコーヒーを頼むお客様と目と目でアイコンタクトをとるK君。知り合いなのかと思いきや常連さんらしく、5日間の体験でそこまでの関係ができたようです。

 しかし、始めからうまくいった訳ではありません。
 「自分の子どもも同じだで…。」といろいろ体験をさせてあげようと、おかみさんの由紀子さんの配慮でレジから始めたものの、まるで声が出ません。スタッフ同士声を出し合っていかないと成り立たないこの商売。
 「そんな声じゃ聞こえないよ!!」とおかみさんに気合いを入れてもらい再挑戦!

 2日目、心配で顔を出してくださった先生も、生徒たちの変化を目の当たりにされ、喜んでくださったそうです。
 毎日書く実習日誌に真剣に記す自己評価には、「お客様やスタッフの皆さんとコミュニケーションを取れるようになりたい。」と。二人の課題を見たおかみさんは、できる限り課題に添った体験をさせてあげたいと心を砕いてくださいました。

 取材中コーヒーを運んで来てくれたK君に、「こういう時は、失礼しますって言うんだよ。」とおかみさん。K君もしっかり応えます。親にさえあまり注意を受けた事がないであろう『現代の子どもたち』。愛情を伴ったきびしいひと言は、いつか2人に役立つことでしょう。

9.16.2008

『西中チャレンジウィーク』シリーズ② 「お客様に喜んでいただくために・・・ノエル洋菓子店」

 育良町にできてもうすぐ3年目を迎える【ノエル洋菓子店】

 ケーキやクッキーの甘いいい香りの中、飯田西中学校2年のNさんは、できあがった丸いクッキーを袋に詰め、M君がその袋の口を機械でとじていきます。作業をしているのは、ご主人の忠さんと奥さまの律子さんを合わせて4人の皆さん。
 口数少なく黙々と作業をする生徒二人に声をかけると、
 「いろいろやる事があって大変です。段々慣れてきてうまくいくようになりました。普段できない事ができて良かった!!」とNさん。家庭的なお店なのでいろいろな作業を経験させてもらえたようです。
 家ではクリスマスや誕生日のケーキを自分で作るというM君。
 「食品の体験をしたかったのでここを選びました!」と目的がはっきりしています。
 「立ちっぱなしで結構大変です。家に帰ると寝ちゃいます。」自分の家で作るのと違って、商品としてお客様に喜んでもらうには、大変な作業があることをしっかり体験したようです。

 忙しい作業の合間にご主人の口からは、転職を経て今に至る自分の仕事に対する思い、子どもたちに伝えたいことなど、とても大切なお話が次々とあふれてきます。

 「人には得手不得手があるから、性格にあった仕事、環境を選ぶことが大切だと思う。自分の性にあったもの、好きなことが見つかれば努力ができる。『努力しなければならないこと』『無理もしなければならないこと』を実習の合間に生徒に話しているんですよ。努力して、それでも無理だったらその人にあった仕事を探せばいいと思う。」

 「自分は、“成り行き”で転職し、創業したんです。“成り行き”でいける人は、実はその場を考えている人。その場に居てその場を否定する人がいるけれど、それはよくない。自分でいいと思ったことをしないといけない。周りに迷惑をかけない範囲でね。」

 「自分の給料・お金がどこから出ているか・・・。お客さんに喜んでもらえて、商品を買ってもらい、経費を引いたものが給料になる。そこを考えられる人でないと仕事とはいえないと思うんです。」

 取材させていただいている途中、ふと静かになった気配に振り向くと、クッキーを試食している二人。こねるお手伝いをしたようです。
 「上手にできているよ!おいしい!!」と、すかさずご主人から認めの言葉。

 次はプラスチックの容器に違う種類のクッキーを詰めます。奥さんがていねいにやってみせ「こうやるとうまく入るよ。」とコツを教えてもらい、チャレンジです。
 手本を見せてもらい、自分でやってみる。それを認めてもらい、工夫しながら又やってみる。こうしたことの繰り返しから「自信」が生まれてくるんですね。

 「お客様に喜んでいただく」ための苦労をしっかり体験できた2人でした。

9.12.2008

「西中チャレンジウィーク』シリーズ① 「未来のお父さんお母さんとなる中学生・・・飯田中央保育園」

 9月1日(月)から5日(金)までの5日間は、恒例となりました『西中チャレンジウィーク』
 1年生が農業体験、2年生が5日間連続の職場体験、3年生が風越山での林業体験をそれぞれ行ないましたが、今回から数回にわたり、私たち地育力スタッフが取材した2年生の職場体験学習の様子を連続して紹介していきたいと思います。
 題して『西中チャレンジウィーク』シリーズ!

 9月5日、飯田西中学校の生徒が5日間の職場体験を行っている「飯田中央保育園」にお邪魔しました。
 昨年、不登校の子どもさんが、同園で5日間の職場体験をやり遂げ、その後保健室へ登校できるようになったこと。その後も自分で連絡を取り、実習中に入ったクラスに遊びにきてくれたこと。を園長先生からお聞きしました。
 『思春期の子どもに命の大切さを知らせ、弱者を慈しむ心をもってもらい、いずれ親になっていくであろう人を育てる一助としたい。』
 園長先生は、受入れた中学生に何を感じ学んでほしいか、どんな人に育ってほしいか、明確なねらいをお持ちです。未満児クラスを中心に1クラスに1人の生徒を配置させることで、生徒自身誰にも頼らず、自分自身と子どもたちと向き合い、先生方に見守られながら体験を重ねます。

【0歳児・あかぐみ】では、Tさんがスプーンで小さい口に食事を運んでいます。
 「初めて働くからきつい事もあったけど楽しいです。小さい子に触れるのは初めです。」

【1歳児・たんぽぽぐみ】では、いとこに1才の子がいるというD君。
 「小さな子がスキ!!」というだけあって、子どもへの接し方にも余裕がみえます。今は珍しいさらしのひもでおんぶをしたり、おむつ替えの経験もできたようです。
 「一緒に遊んだり、笑ってくれるとうれしいです!」とD君。
 「雰囲気や笑顔がいいから子どもにも人気があるんですよ!お兄ちゃんのひざにスポッと入ってネ!」先生方もニコニコと温かく見守ってくださっています。

【2歳児・ももぐみ】に入ったY君は、子どもが大好き。
 ハキハキと話してくれます。家庭科の授業で風越保育園に行き、今回2回目の体験でますます“子ども好きの自分”を感じたようです。
 「しゃべっている事がわからないけど、何となくわかります。次に何をするかわからないからよく見ないと…。ひざに入ってくると可愛いです。いやされます!!」
 体験学習をしながら癒される。これも5日間連続体験の成果でしょうか。既に昼食を食べ始めた子どもたちから「お兄ちゃん、来て!」とご指名です。人気爆発のY君でした。

 園内にいると目に入るのが、保育園としてめざす子どもの姿

1.ありがとうのいえる子ども
1.あいさつのできる子ども
1.友だちを大切にできる子ども
1.元気にあそぶこども

 まさに社会に出て必要な要素です。家庭・学校・地域、周りの大人に見守られ教えられ様々な経験を通して、子どもたちが将来仕事に就き、自立して生きていける社会人に成長していってくれることを願います。

9.11.2008

第2回飯田市みんなで子育てパワーアップ講座が開催されました。

 9月1日(月)に松尾公民館にて、みんなで子育てパワーアップ講座の第2回が開催され、約30名の方が参加されました。

 今回の講座は、東京都世田谷区で子育て支援事業を行う会社『アミーゴプリュス、LLC』の代表社員である市川望美さんを講師に迎え、『子育てはハンディじゃなくキャリア!』のテーマで講演とグループトークを行いました。

 市川さんは、自身の子育て中に出会った子育て支援サークル『amigo』の活動に関わるうちに、「地域」や「相互支援」に興味を持ち、勤めていたIT系企業の総合職を辞し、『amigo』のスタッフとして活動を開始。その後「やりたいことをやり続けるための基盤」や子育て支援事業に新しい価値をプラス(プリュス)したいとの思いから、『amigo』の企画系スタッフの仲間と一緒に『アミーゴプリュス、LLC』を立ち上げ、現在代表として、産前・産後のサポート、地域の子育て支援のコンサルティングの活動をされています。

 市川さんは、『amigo』に出会った当初に、サークルのスタッフの「困ったときはみんなで支えあえばいい。出来る事をみんなにやってあげればいい。」の考え方に感銘を受けたそうです。特別な資格がなくても、自分がやれることを相手に教えてあげる。相手が困っていれば自分なりの経験を伝えてあげる。自分がしてもらったことを相手にもしてあげたい。そんな「子育て“相互”支援」への思いから、活動に深く関わるようになったそうです。

 「子育ては決してハンディではない。自分が何をしたいのか、どうありたいのかを考え、まず行動してみるのが大事。キャリアとは、人生や生き方そのもののことです。『みんなで一緒にやろう』の気持ちが大切です。」市川さんのお話に、受講生はメモを取ったり、うなずいたり、興味深く聞き入っていました。

 講演後は、数名に分かれ、グループトークを行いました。「自分が今どんな状況にあるか(疲れている状態から元気な状態など)」の簡単なセルフチェックや、今回の講演についての自分の考えを持ち寄り、各グループの代表者が発表しあいました。「市川さんの前向きな考えや行動力がすばらしいと思った。」「要求するばかりでなく、お互いに助けあうこと、『一緒にやろうよ』の気持ちを大切にしたい。」「たくさんの人が集まると、多くのことが生まれる。資格がなくても出来ることをやればいいんだと思った。」などの意見が発表されました。

 IT系企業の総合職から転身し、子育て支援の活動に携わるようになった市川さんのお話は、自分の経験と重ねた身近な話として引き込まれた受講者も多かったのではないでしょうか。また前向きな市川さんのお話に、共感を得たり元気をもらった方も多かったと思います。

 「子どもが活き活きと育つために、自分もイキイキとしていたい。」と子どもを持つ多くのお母さんたちが感じていると思います。市川さんのお話が、子育てに悩みを抱えているお母さんや、子育て支援に関わっている受講者さんにとって、一つのヒントとなり、より元気に生活してもらえればうれしいと思います。

9.10.2008

『森の語りべ講座』in大鹿村

 9月6日(土)に大鹿村鹿塩地区を中心に第5回「森の語りべ講座」を開催しました。

 今回は、「大鹿村の巨樹・古木観察と歴史探訪」を題して、寺岡義治さんに中央構造線に沿った巨樹、古木をご案内して頂きました。
 寺岡さんの説明では「下伊那竜東地域は、大鹿村分杭峠から飯田市南信濃の青崩峠を縦貫する中央構造線が、東西に地質、植生などを分けていると言われています。同じ樹種でも、東西で遺伝子が違うとされ、西形・東形との分類が始まっております」との事です。私たちの地域が、この様な多様性を持つ地域であることに感動しながら、1日観察会を行いました。

 始めに鹿塩の「シラカシ」を観察しました。
 「シラカシの巨木は、所有者の菅沼家のご先祖が植えたものと伝えられております。菅沼家では、この巨木を「森」と呼んでいます。森は「守」であり、根元には山の神が祀られ、水源である急峻な裏山に山崩れを防ぐ根を大地に張り巡らせて近くに湧き出す清水を守り、日々の生活を守っています」と寺岡さんの説明を聞いている時に菅沼さんもお見えになり和やかに談笑しました。

 次に鹿塩塩泉院下の「サイカチ」を観察しました。
 「地元ではセーカチと呼び、かつては、屋敷の近くに植え、莢(さや)を拾い集めて薬用として使ったりしました。戦後まで富山から薬屋さんが莢(さや)を集めにきたと言います。この木の所有者の松尾さん方では、代々この樹は屋敷を守っている樹だから絶対に伐採してはならないと伝えられてきたそうです。この樹は、36災にも言い伝えの様に屋敷を守ってくれたそうです」

 次に鹿塩北川の「サワラ」を観察しました。
 「天正年間に遠山土佐守が武田氏へ参勤の途中、この木の根元に弓矢を立てて祈願をしたと言われています」。

 次に中央構造線北川露頭を観察しました。
 また、分杭峠で話題のゼロ磁場の体験をしてきました。山の中の不便な峠にたくさんの人が集まっていました。

 貸し椀の言い伝えがある大池で昼食を取った後、午後は、円通殿のイチョウと観音堂のアカマツの観察を行いました。
 「「アカマツ」は、昔、ここを行き来する人々の休息の場所と言われています。この松にお願いすると子どもの夜泣きを治してくれると伝えられてきました。その昔、宗良親王の幼い姫君の夜泣きが止まらないのを土地の老人が、この松の葉を枕の下に入れる様に教えたところ、それ以降、姫は夜泣きをしなくなったそうです」。

 寺岡さんのお話を聞きながら、地域を歩くと地域の人々は、自然と共に歩んできたことをひしひしと感じることができました。また、この講座に参加している中学生も他の大人との会話に加わりながら、一日を過ごしていました。
 私たちの故郷は、こんなにも魅力がいっぱいだと言うことに気づきます。この魅力を次世代へ引き継ぐ事は、「地育力による学習」の大切な役割だと思います。

 次回の「森の語りべ講座」は、「飯田市大平の東沢林道」を予定しています。

9.01.2008

心の準備をして、いざ職場体験!

 今年度も市内の中学校では、全中学校で職場体験学習を実施しています。
 既に10校中6校が終了しており、残りの学校も11月までに終了します。今週は、5日間連続職場体験を先進的に取り入れた飯田西中学校の『西中チャレンジウィーク』が実施されるなど、いよいよ佳境に入ってきた感じです。

 さて市内の多くの中学校では、キャリア教育の一環として職場体験学習の前に外部講師による「ガイダンス」を行なっています。このガイダンスのねらいは、将来生徒自身が何らかの仕事に就いて「働く」ということを意識させ、今の日々の生活や勉強が将来につながっていることを理解させることにあります。同時に、目前に迫る職場体験学習にどのような心構えで臨んだらいいのかという意識付けも目的としています。

 「仕事って、お金を稼ぐために嫌でもやらなきゃいけないものなんだ。」
 「楽しくて、苦労が少なくて、沢山設けられる仕事に就けたら幸せだろうな。」
 そう思っている子どもたちも少なくないでしょう。
 外部講師の方々は、それぞれの体験談を通じていろいろな話をしてくださいます。

 「夢や目標を持つことはとても大切。それに向かってがむしゃらに努力することは、かけがえのない財産になります。」

 「現実は厳しい。自分が本当に就きたい職業に就ける人なんてそんなに沢山はいません。いろいろな運命の中でやむを得ず就いた職業でも、「そこでどう働くか」が大切ですね。気持ちの持ち方や取り組み方次第で、その仕事がとてつもなく楽しくなるものです。」

 「仕事は、お金を稼ぐために仕方なくやるものじゃ、自分にとって何にも残らないしつまらない。働くことが自分に与えてくれるものは、お金だけじゃありません。」

 「自分が持っている個性や能力を発揮して仕事をやり遂げたときには、周囲から認められます。認められることによって、自分の存在価値を感じることができるのです。そしてそれが意欲へとつながり、また努力をして成果を出します。仕事とは、まさに自分を育ててくれるステージなんです。」

 こうしたお話から、多くの生徒たちは「自分の夢ってなんだろう?本当にやりたいことってなんだろう?」と自問自答することでしょう。

 また、職場体験学習の直前になると、仕事をする上での心構えやビジネスマナーに関するガイダンスを行ないます。

 「社会人は、みんな「会社」の看板を背負って働いています。例えば、営業先でたった一人の営業マンの態度が悪かっただけでも、会社全体のイメージが悪く捉えられてしまいます。」

 「社会は、いろいろな人や会社が信頼関係で結ばれているものですから、信頼関係が崩れたら仕事をしていくことができません。だから、礼儀や身だしなみなど相手に与える印象はとても大切なのです。」

 「人の他人に対するイメージというのは、第一印象で92%が決まるといわれている。残り8%が話をしたり、お付き合いをしていく中で形成されていくものであるといわれており、特に第一印象というのは非常に大切なものです。」
 同級生や先輩、後輩、そして先生といった同じメンバーが毎日顔を合わせる学校。そんな中で生活している子どもたちにとっては、身の引き締まるお話ではないでしょうか。

 このようにして生徒たちは、「心の準備」をして、家族や学校から離れた未知の世界に飛び込んでいきます。
 しかし、一度や二度講話を聴いたからといって、そう変われるものではないのも事実です。だからこそ受入れてくださる職場の皆さんに実際に働く姿を見せていただき、具体的に話をしたり助言していただくことによって、「仕事の厳しさ」「楽しさ」「人とのつながり方」などを“生きた学習”として子どもたちに伝えていただきたいのです。自分の知らない大人からの真剣な指導・メッセージは、家庭と学校しか知らない中学生を教育し、変化成長させてくれると思います。

 職場体験学習を通じて、事業所の皆さんが地域の子どもたちを教え育てていただいていることは、まさに「地育力」の原動力といえます。日々のお忙しい中で、子どもたちのために時間を割いていただいていることに感謝しつつ、これからも更に積極的な受入れをお願いしたいと思います。