12.26.2007

キャリア教育推進実行委員会が発足

 12月18日(火)
 飯田市キャリア教育推進実行委員会が発足し、第1回目の会議を開催しました。
 この委員会は、産業界、学校関係、行政による産学官連携組織で、商工会、JA、経営者協会、社会福祉協議会、PTA、校長会、総合学習担当教員、市産業経済部、教育委員会などのメンバーで構成されています。
 
 冒頭、長野県教育委員会指導主事からの発表の中で、現在文部科学省では、連続5日間の職場体験学習を推進するキャリア・スタート・ウィーク事業を展開しているというお話がありました。
 国が連続5日間の職場体験学習を推奨する理由は、「1~2日の職場体験でわかるのは仕事の苦しさだけだが、3~5日続けることで楽しさや達成感を感じることができるようになり、より効果の高いものになる。」ということのようです。

 この効果に着目し、市内でも既に連続5日間実施している学校があります。その学校の先生方は、生徒たちが職場体験学習を通じて大きく変わる様子を周囲に訴えており、おそらく他の学校も徐々に実施期間を長くしていくことになるでしょう。
 しかしこのことは、生徒たちを受入れる事業所にとっては益々受入れにくい環境となり、受入れを拒否する事業所が増えることにつながりかねません。

 そこで今後の取り組みとして、キャリア教育の意義や役割、効果などについて多くの事業所の方々により深く理解を求め、積極的に受入れていただける環境を作っていくことが重要となってきます。
 実行委員会では当面、事業所の皆様を対象としたシンポジウムの開催やリーフレットの製作など、この飯田にキャリア教育を浸透させるための取り組みを行なっていく予定です。

 現在全国各地において、産学官連携によるキャリア教育推進の取り組みが行なわれ始めていますが、人口10万人、中学校10校、実施人数1,100人余という比較的大きな規模である飯田市での地域ぐるみの取り組みに注目が集まっています。

12.21.2007

世界的先端技術に触れる

 市内で4番目に大きな中学校「鼎中学校」では、11月上旬に全校一斉のチャレンジデイを実施しました。

 1年生は地元企業の見学。2年生は2日間の職場体験学習。3年生は生活マナーや異文化学習などをいくつかのグループに分かれて実施しました。
 今回は、地元企業見学に出向いた1年生の様子を紹介します。

 1年生が見学に訪れた企業は、”MfLens”と呼ばれる高精度光学レンズを製造している「夏目光学株式会社」です。
 まず初めに学校の会議室で社長さんのお話をお聞きしました。
 「社会に出ると自分がやらないと生きていけない。」
 「知識を出せる人は知識を。出せない人は汗を出せ。」
 「働いてお金を稼ぐということはプロになるということ。」
 「周りから必要とされる人になれ。」
 など、生徒たちに激を飛ばしていただきました。

 続いて会社に徒歩で移動して、工場とショールームの見学をさせてもらいました。

 工場には様々な機械がたくさんありましたが、それぞれの機械に担当の方がついていて、レンズが手作りで作られているという印象を強く受けました。

 ショールームでは、様々な大きさや形のレンズや、夏目光学製レンズが使われているカメラや望遠鏡、顕微鏡などが展示されていました。

 中でも一番人気は、自分の血液を顕微鏡で見るコーナー。赤血球と白血球がはっきりと見え、いわゆる「サラサラ血」か「ドロドロ血」かがわかるというものです。
 先生が「自分の血液を見てみたい人!!」と大声で呼びかけると
 「ハイ!ハイ!ハイ!」と殺到・・・
 時間の都合上数人が代表して血液を採取しましたが、「サラサラ」「ドロドロ」など様々。中には「これはイガイガ血だな。今お腹痛くない?」といわれた生徒もいて、ドッと笑いの渦がおこりました。

 また、指先の毛細血管を見る装置のコーナーでは、従業員の方に「君は冷え性だな。」といわれ、友達同士冷やかしあう微笑ましい姿もありました。

 生徒たちの感想は、

 まず社長さんのお話を聞いて、
 「あいさつは、働くということにおいてもとても大切だと思った。」
 「将来働くために、今何をしたら良いか、どのように生活していけばよいかわかってよかった。」
 「自分の能力や長所・短所を早く見つけることが大切だということがわかった。」

 一方、工場見学をしてみて、
 「レンズを作るための機械そのものを自社で作っているなんてすごいと思った。」
 「レンズは、機械で自動的に作られていると思っていたが、人の手がこもっていてすごいと思った。」
 「レンズの加工というのは、料理でいう切ったり削ったりすることと同じだということがわかってびっくりした。」
 など様々でした。

 生徒たちは、この体験を通じて地元にある企業をより身近に感じることができたようです。

放課後、思いっきり 遊んでいます!!

 飯田市では、11月後半より市内の2校(丸山・竜丘)の小学校で「放課後子ども教室」が始まりました。「放課後子ども教室」は、該当校のすべての子どもを対象に、安全で、安心な放課後の子どもの居場所を設け、地域の方々にも参加してもらって、様々な体験活動や交流活動の場にしようと今年から文部科学省が推し進めている事業です。飯田でも、放課後の子ども達の安全な居場所や地域の方々との交流の場が少なくなってきていることを多くの方々が懸念しています。この教室が、子ども達にとって地域の人々と交流しながら思いっきり遊べる場になるよう、該当校の地域スタッフの皆さんは皆一生懸命毎回の教室の計画を立て取り組んでいます。

 11月14日に初日を迎えた丸山放課後子ども教室。この日に向けてスタッフのお母さん、お父さん、そして地域の人たちが、何度も会議を重ね計画を練ってきました。
 当日は、約60人の参加児童が、それぞれ体育館でスポーツをするグループとミーティングルームで本を読んでもらったり、絵を描いたりするグループに分かれて遊びました。

 大縄跳びにチャレンジしたグループでは、先に跳べた子が苦戦している子を一生懸命応援する姿も。短い時間でしたが、皆思いっきり体を動かして楽しみました。
 丸山小学校では、この日をスタートに第1、3水曜日と第2土曜日の月3回教室が開かれています。

 一方こちらは、12月5日に竜丘小学校放課後子ども教室(丘の子遊YOU)で行われた紙飛行機作り体験の様子です。
 地元に住む紙飛行機作りの達人さんの指導で、30人の「丘の子」たちが、3種の飛行機作りにチャレンジ!今まで我流で飛行機を折ったことはあっても、こんな本格的な折り方は初めての様子。みんな真剣です。低学年の子ども達も、先生やスタッフのお母さん、そして上の学年のお兄さんお姉さんに教わりながら、みんな立派な飛行機を完成させることができました。

 次はいよいよ飛ばしてみます。体育館に移動し学年ごとに飛行距離を競い合いました。20m近くも飛んだ飛行機があったのには達人もびっくりでした。
   当日は、この他にもう一つスポーツを選択したグループがありました。6年生から1年生まで講師の先生に教わりながらよさこいソーランの踊りを勢いよく踊りました♪
 このように竜丘小学校では、毎週水曜日、子ども達が元気な放課後を過ごしています。

自分で作った納豆、ちょっとやわかったけどおいしかったよ!!

 10月6日(土)竜丘公民館実習室。
 小学生とその保護者約30人が集まる中で、スーパーサイエンス推進事業第二弾「親子納豆作り体験教室」が、旭松食品株式会社の多大なご協力のもと開催されました。

 会社概要の説明を受けた後、納豆ができるまでの過程・製法について勉強。更に顕微鏡を通して実際に納豆菌を見たり、納豆の糸がどれくらい伸びるか実験したりと、様々な角度から納豆に触れることができました。

 続いて実際に納豆作りに挑戦しました。1時間ほどで蒸し上がった大豆に納豆菌をふりかけ全体に行き渡るように混ぜ合わせ、50グラムずつ慎重にパック詰めを行い、最後に薄いシートをかけ蓋をして下準備が出来上がり。
 最初はみんな簡単にできると思っていた納豆作りですが、ちゃんと粘りのある納豆になるためには、
 ・蒸した大豆の温度が高いうちに納豆菌を混ぜること。
 ・ボウルやスプーンに雑菌が入らないように細心の注意を図ること。
 ・1パック50gをきちんと測って詰めること。
 ということが大切だとわかり、参加者は意外に手こずりながら慎重に挑戦しました。この納豆は、旭松食品で数日間発酵・熟成していただき、後日参加者の自宅に送られました。

 そのほか、国産大豆や輸入大豆など数種類の納豆を試食して当てる「利き納豆クイズ」や、テンペ・チョングッチャンなど海外の納豆の仲間の試食。納豆を使ったレシピをもとに納豆料理を作ってみんなで納豆ランチを楽しむなど、納豆づくしの1日でした。

 後日、自宅に届いた納豆を食べた感想をお聞きしました。
 ・市販のものより豆がやわくておいしかったよ。
 ・なんとも言えない大豆の味がして良かった。
 ・市販のものよりちょっと粘りが弱かったかな。
 ・市販のものよりにおいが少なくてちょっと物足りなかったような・・・
 など様々でした。
 ただ、自分が作った納豆だったので、皆さんよく味わって食べられたようです。

 ちなみに、作った納豆の原料である大豆は、地元飯田山本産。1人4パックも作りました。
 お母さんと一緒に参加した小学2年生のMさんは、「豆は国産の方がおいしい。納豆好きなお父さんに1つあげて、残りの3つは自分で食べるの。」と言っていました。
 お父さん、しっかり味わえましたか?!
 Mさん、自分の納豆でご飯もたくさん食べられたかな?

西中チャレンジWeek

11月16日(金)AM9:00。飯田西中学校体育館において、今年度実施した「西中チャレンジWeek」の発表会がありました。

 飯田西中学校では、今年度
  1年生が農業体験(7月に2日間、9月に2日間)
  2年生が職場体験(9月に5日間連続)
  3年生が風越山における林業体験(7月に2日間、9月に2日間)
 をそれぞれ実施し、各学年毎に実践発表が行なわれましたが、今回は2年生の「職場体験」にスポットを当てて紹介したいと思います。

 同校では、昨年文部科学省の指定を受けて、キャリア・スタート・ウィーク事業を実施しました。9月に2日間、10月に3日間の合わせて5日間の職場体験学習を行なったわけですが、今年度は更なるチャレンジということで、9月に地元の事業所56社のご協力をいただきながら5日間連続で職場体験学習を実施をしました。5日間連続で実施したのは県内でも西中を含めて2校だそうです。

 発表会では、6人の生徒から5日間の体験を通して印象に残ったことや学んだこと、更には「働くとはどういうことか」ということについて、それぞれから発表がありましたので簡単に紹介します。

○ 介護施設で体験した男子生徒
 入所者のお世話をしたら「ありがとう」と言われてすごくうれしくなった。
 「働く」とは、誰かの役に立つことだ。

○ 保育園で体験した女子生徒
 最初は子供たちに話しかけられなかったけど、後半のほうで自分から話しかけてみたら、とてもかわいい笑顔で話しかけてくれた。自分が周りにどう接するかが大切だと思った。
 「働く」とは、人の役に立ち、社会の役に立つことだ。

○ 製造業で体験した男子生徒
 作業中に製品を落としてしまった。社会では少しの失敗も許されないことを学んだ。物を大切にすることに心がけていきたいと思った。
 「働く」とは、人が生活をしていく中で大切なことを教えてくれる。

○ 小売業で体験した男子生徒
 最初は自分からあいさつができなかったが、最終日に思い切って自分からあいさつしてみたら、すべてのことに積極的になれた。
 「働く」とは、あいさつなどを通して人との関わりを広げること。

○ 美容院で体験した女子生徒
 4日目まで、ほとんど自分のことを気にしてくれていない気がしていたが、最終日に1枚のメッセージカードをいただいて涙が出てきた。我慢する力と人を信じる心の大切さがわかった。
 「働く」とは、周りの人の支えと誰にも負けないプライド。

○ 和菓子製造販売店で体験した女子生徒
 和菓子作りの大変さがわかったが、自分が作ったものを店頭に出していただけたことに感動し、最後まで頑張ろうという気持ちになった。
 「働く」とは、人の役に立って喜んでもらうこと。

 実践発表のあとのパネルディスカッションでも、生徒たちからは、
 「職場の人たちは、休憩をあまりとらずに頑張っていた。その姿がすごくかっこよかった。」
 「いつもお客さんのことを考えている姿勢がすごいと思った。」
 などの感想が聞かれました。

 みんなとても良い体験をしてきたようです。

子どもの社会力を育むために ~今、地域と家庭でできること~

~筑波学院大学学長
      門脇厚司氏講演会を開催しました~

「子どもの社会力」(1999・岩波新書)という本をご存知ですか?

 さる11月14日(水)夜、竜丘公民館大ホールにて、竜丘公民館文化委員会と生涯学習・スポーツ課の主催で、この本の著者門脇厚司氏の講演会が開かれました。
 「社会力」という言葉は、門脇氏の造語で、「人が人とつながり、社会を作る力」「そして、より良い社会を作ろうとする意欲、構想力、実行力」を意味します。
 講演で門脇氏は、昨今の子ども達は幼い頃からのメディア漬け生活や他者との関わりの不足が原因で、社会力が低下してしまっている、他人に関心を持てず、他の人のことがわからない人間が多くなっている、と指摘しました。そして、社会力を養うには、何よりも地域の子ども達を多くの大人たちとの関わりの中で育てていくこと、具体的には、学校教育や地域行事に地域の大人たちがどんどん関わることだと大変熱く語りました。また、本来人間の赤ちゃんは、大人と触れ合うための驚異的なコミュニケーション能力を具えて生まれてきており、この能力をフルに稼動させ、多様な他者と交わることこそ、社会力の強化となり、学ぶ意欲の増大になり、ひいては学力の向上にもなるのだ、とも。
 参加者は皆、門脇氏の力強さに引き込まれるように話に耳を傾けていました。
 
 門脇氏も講演の中で指摘されましたが、「社会力」は飯田市の「地育力」とも深く通ずる考え方です。地域の大人みんなが子ども達のことを気にかけ、関わっていくことが子ども達にとっても最高の教育となり、大人との心地よい関わりは、子ども達が故郷に愛着を感じる源となります。近くにいる子ども達をあらためてしっかり見つめ、交わっていきたいものです。

12.20.2007

教育委員会によるキャリア教育支援

 地育力の3つの柱の1つ、“キャリア教育”

 飯田市教育委員会では、今年度からキャリア教育コーディネーターを配置し「キャリア教育の支援」の取り組みを始めました。メインは、中学生の職場体験学習のための職場開拓のコーディネート。 飯田市には、中学校が10校、1学年当たりの生徒数が1100余人います。事業所の数は6500余。ただ、今年度職場体験学習の受入れをしていただいたのは300余社。まだまだ受入れ事業所数を増やしていく取り組みが必要だと感じています。
 
 さて、そういう中で始まった教育委員会によるコーディネートとは・・・
 まずは、年度当初に職場体験学習の受入れをしていただける職場を募集しました。その結果150社ほどの事業所に手を上げていただくことができました。
 その事業所に対して各学校の実施日をお知らせし、その日に最大何人まで受入可能かを確認し、その結果を学校に提示します。
 学校は、その結果をもとに子供たちの希望を取りながら割振りし教育委員会に提出。教育委員会は、その希望人数を各事業所に通知し、これで受入れ事業所の確定となります。
 あとは、担当の先生や生徒が直接事業所と連絡を取り合い、職場体験学習当日に向けて準備を進めるということになります。

 このコーディネートシステムについては、概ね事業所の皆さんからは「受入れ計画が立てやすくなった。」「窓口が一本化されていて良い。」といった声が聞かれています。
 また、学校側からも「職場開拓は大変労力がいることだからありがたい。」「職場の選択肢が増えた。」などの声があがっています。
 まだまだ初年度ということもありこのシステムには課題も残されていますが、教育委員会ではキャリア教育をより効果的なものにしていくために、より良いシステム作りをしていきたいと考えています。

働くってどういうこと?(キャリア教育の試み)

市内某中学校の職場体験学習の現場から・・・

介護福祉施設で3日間体験したAの感想
 最初すごく疲れて「こんなに大変なのか」と思ったけど、2日目から結構疲れなくなったし「楽しい!」と思えるようになりました。
 この3日間を通して人と接することについて学ぶことができました。将来、この場所に勤められたら勤めたいです。

スーパーで3日間体験したBの感想
 3日間やってみて腰が痛くなったけど、お店の人は毎日やっていて「すごいなぁ」と思った。僕は、お母さんのお手伝いもしていないので、手伝いをしてお母さんが少しでも楽になってもらうために頑張りたい。

 飯田市では、市内10中学校すべてで2年生を中心に職場体験学習を実施しています。今年度実施日数が最も長かった学校は、5日間(月~金まで連続)でした。地元の事業所の多大な協力を得る中で、とても有意義な体験学習を実施することができました。 市内全中学校の本年度の職場体験学習は終了しましたが、しっかりと検証して来年度の取り組みにつなげていきたいと考えています。

 次回は、今年度からスタートした教育委員会によるキャリア教育支援のしくみについてご紹介します。

3つの柱

 昨年度策定した
 「地育力向上連携システム推進計画」
 この推進計画の3つの柱は、「体験活動」「キャリア教育」「人材育成ネットワーク」です。

Ⅰ 体験活動
 飯田の自然・歴史・文化などを活かし、感動をもたらすようなほんものの験を通じて「生きる力」や「社会をつくり、運営し、より良く作り変えていく資質や能力」を高めていくことを目指します。
Ⅱ キャリア教育
 地域に根差した産業における体験を通じて、自らの生き方を考え、将来の夢を実現するための力をつけるために実施します。
Ⅲ 人材育成ネットワーク
 地域の研究者や研究機関、社会教育施設が密接に連携し、地域の人材を育む地域の力を高めるための人材育成ネットワークをつくります。

 今年度は「地育力元年」。様々な具体的な取り組みが始まりました。

【地育力】 ~飯田から始まる、地域教育~

 飯田市では、【地育力】と名づけた地域教育の考え方に立ち、様々な「体験活動」や「キャリア教育」、「人材育成ネットワーク」を3つの柱として推進しようとしています。
 このブログでは、地育力向上に向けた様々な具体的な取り組みを紹介していきます。