10.31.2008

なっとうって、どうして“ネバネバ”するの? ~スーパーサイエンス推進事業~

 なっとう好き親子8組19人が集まった10月18日の松尾公民館。
 旭松食品㈱、飯田市、飯田市教育委員会共催のスーパーサイエンス推進事業「なっとうの“ネバネバ”のなぞを探ろう!」が開催されました。

 まず最初に旭松食品㈱の会社概要のお話からです。
 凍り豆腐、即席みそ汁、即席スープ、そして納豆。あまりに有名なので既にみんな知っています。スーパーなどの店頭でも良く目にし、毎日のように食卓に上る製品を作り出している会社が、私たちの地元にあることを再認識しました。

 会社概要が終わると、さっそく納豆作りの準備です。
 今回使用する大豆は飯田市山本産の「ツブホマレ」。大粒の大豆です。一晩水に浸した大豆をザルに入れ、それを少しだけ水の入った圧力鍋の中に入れます。
 「水は、鍋の底から1センチくらい入れてください。」
 講師の先生の説明に、
 「ものさしがないよ・・・」
 という男の子。
「ものさしはいらないよ。」と、どっと笑いがおこりました。
 鍋のふたをしてコンロに乗せ点火。あとは1時間半ほどかけて大豆が蒸し上がるのを待ちます。

 それを待っている間、「なっとうができるまで」を学ぶ勉強会の開催です。
まず始めに、原料の大豆が【 洗浄 → 浸漬 → 蒸煮 → 菌接種 → 盛込み → 発酵 → 後熟 】という工程を経て納豆になっていく説明を聞きました。
「大豆に付着した納豆菌が増殖し、たんぱく質を分解してうまみと粘りが生まれること。」
「納豆菌を増殖させすぎるとにおいがきつくなるため、ちょうど良いところで冷やして菌の活動を止め、菌の酵素で熟成させること。」
など、「なっとうができるまで」の過程がよくわかります。
 「では、なっとうの糸ってどのくらい伸びるか知ってるかな?」という講師の先生の問いかけに参加者の皆さんは首をひねります。2人の講師が箸を持って納豆の糸をゆっくり伸ばしていくと、実習室の隅から隅までだいたい5mくらいでしょうか。目に見えないくらいの細い糸がまだつながっているのを確認すると、大きな歓声があがりました。

 そして、今日の勉強会の重要なポイントである「納豆菌」。
 「皆さん、納豆菌てどこにいるか知っていますか?」との問いに、何人かの保護者の方が小声で「わら・・・かな・・・」と答えました。
 「そうですね。わらの中にいるんですね。だから昔ながらの納豆は、わらに包まれているんですね。でも、わらには納豆菌だけではなくてたくさんのほかの菌も潜んでいます。では、納豆菌だけを取り出すにはどうしたらよいでしょう。」
 またまた先生から質問が飛び出しました。これはさすがに皆さんわからない様子。
 「それは、納豆菌が熱に強い菌だから、熱を加えてあげればいいんです。熱を加えれば、ほかの菌は死んでしまいますからね。」
 全員がなるほどと頷きながらメモを取ります。次に、実際に納豆菌を見せてもらうことになりました。1個や2個の菌では肉眼で到底見えませんが、約10億個にも増殖したものであれば目に見えるようになります。シャーレに入った納豆菌のかたまりを楊枝でつついてみると、なっとうと同じように糸を引きました。
 「納豆菌の種類はたくさんあります。まだ発見されていない、とてもすばらしい菌もきっとあると思います。そんな“スーパー納豆菌”を毎日探すのが僕たちの仕事なんです!」
 誇らしげに語っていただいた講師のお話に、子どもたちの目がとても輝いていました。

 続いては、“利きなっとうクイズ”のコーナーです。
 大粒納豆、中粒納豆、小粒納豆、ひき割り納豆 の4種類の納豆を食べて当てるというクイズですが、実は解答用紙に「北海道産(大粒)、長野県産(中粒)、アメリカ産(小粒)・・・」と書いてあったため、粒の大きさを見比べればだいたいわかってしまいました。したがって“全員正解!!”で、賞品の即席みそ汁をGETです。すると、賞品の中を覗いた1人の女の子が、
 「な~んだ。納豆じゃないんだ・・・」
 ごめんなさい (;・д・A
 でもとっても納豆が好きなんですね (*´▽`)

 次は、ちょっと変わったなっとう?の試食コーナー。
 「たぶん二度と食べることのないものですから、よく味わってくださいね!」
 と言われながら1人1人に4つずつ配られた納豆パック。それを恐る恐る開けてみると、

 緑色の粒は「枝豆」
 薄い黄色のクリーム状のものは「チーズ」
 黄色の粒は「コーン」
 小豆色の粒は、まさに「小豆」


 皆さん何とも微妙なリアクションです。ところが食べてびっくり。特に枝豆は、製品としてもいけるんではないかというほど!?美味しいものでした。

 そうこうしているうちに、大豆が蒸し上がったようです。
 大豆に雑菌が入らないよう、入念な手洗いなど細心の注意を払いながら作業を進めていきます。
 まずは、滅菌したボールに大豆を必要な分だけ量りながら移していきます。そして、大豆の熱が冷めないうちに“納豆菌”の投入!同じく滅菌したスプーンですばやくかき混ぜ、今度はパックに50gずつ盛込みます。重さを慎重に量りながら少しずつ乗せていき、50gに達すると薄いビニールのシートをかぶせ、蓋をセロハンテープで止めて、最後に自分の名前を書いて出来上がりです。

 今回使用した納豆菌は、最近店頭でもよく目にするようになった「おなか納豆」の菌でした。これで、“飯田産ツブホマレのおなか納豆”という世に出ていない「スペシャルなっとう」の完成です。
 このなっとうは、2日間旭松さんで発酵・熟成をするために保管していただきます。そして、晴れて「なっとう」になったら、参加者の自宅に送っていただけることになっています。
 ただ、100%ちゃんとした粘りのある納豆になる保証はないとのこと・・・。
 皆さんの作った納豆がどんな様子だったか、あとで我々スタッフに教えてくれることになっています。
その結果をお聞きするのがとても楽しみです!

10.29.2008

お米は甘いよ! ~浜井場小学校5年生稲刈り作業~

 10月の気持ちよい秋晴れの日、龍江地区今田平のいっかくにある田んぼで、浜井場小学校の5年生が稲刈り体験を行いました。浜井場小学校は、文部科学省の「農山漁村におけるふるさと生活体験事業」の推進校で、今回は稲刈りと農家への民泊をして、農村の生活を体験しました。

 5月に自分たちで田植えを行った稲が、大きく黄金色に実っています。
 子ども達は周りの人にケガをさせないよう注意しながら鎌を使い、慎重に少しづつ稲を刈っていきます。
 「ふ~。暑い。」
 額の汗をぬぐう子どもたちの顔は真剣です。
 刈った稲は、はざ掛けができるよう、束にして紐で縛っていきます。
 「稲を刈るより、縛るほうが力がいってえらい~。」
 という子もいます。腰をあげ、「ハア~」と大人のように息をつく子どももいて、ほほえましい光景です(*^-^*)

 子どもたちが何人か集まって何か食べています。近寄ってみると、「生のお米を食べてみたら、甘くて美味しい。」「噛んでると甘くなるよ。」「いつも食べてるご飯と色が違う。」と言って、お米の粒を少し分けてくれました。食べてみると、なるほど!精米していないため、確かにお米が黄色く、噛むと甘味が出てきます。
 こちらでは、「バッタだ~!デケー!」と、たくさんの虫にも興味津々。子どもたちは新しい発見をたくさんしたようです。

 作業がひと段落したところで、農家の方達が出してくれた梨を食べて、ちょっと休憩です。
 「今日(農家に)泊まるの楽しみ!」
 「夏に農家に泊まったときは、部屋にご先祖様の写真があってちょっと怖かった」
 「ご飯が楽しみ!」
 など、会話が弾みます。
 休んだあとは、ちょっと歩いて、近くでコンバインを使って稲刈りをしている田んぼを見学に行きました。手で刈るのとは比べ物にならない速さです。
 「何でも質問してみて!」との農家の方の言葉に、次々と手が挙がります。
 「1日にどれくらい稲が刈れますか?」
 「この広さで何人分のお米がとれるんですか?」
 「機械はいくらですか?」
 などなど、質問が尽きません。
 「10アール(1反歩)の広さで、良くお米が取れたとして約10表、10表が約600キロです。1人あたり1日2合を食べたとすると、5人家族の約1年分のお米が取れますよ。」
 など、質問のひとつひとつに丁寧に答えてくれます。子ども達の質問が尽きないため、「あとひとつだぞ」と農家の方。(^x^;)
 子どもたちの感性に、あらためて可能性を感じました。

 今日のお泊りで何をするか話をしながら、子どもたちは再び稲刈り作業へ戻っていったのでした。

10.27.2008

「お持ち帰りは“遊び心”と“楽しむ心”」 ~第3回みんなで子育てパワーアップ講座~

 前日までの雨がうそのような秋晴れの空の下、もみじの紅葉が始まった野底山森林公園を会場に、『第3回 飯田市みんなで子育てパワーアップ講座』が開催されました。
 子育て真っ最中のお母さんと、子育て支援に意欲をもつベテランの方々39人が、信州大学経済学部教授 古屋顯一先生の“遊びワールド”に仲間入り!

 まず、上手な指導者は、①自分が楽しめる人(キラキラしている)②目的を見失わず、ゴールから考えて段取りができる人、というお話をうかがいました。
 続いて、身体をほぐしながら自己紹介。2人から6人、最後は全員で手をつなぎ一つの輪に!先生よりテニスボールが渡され、「よーいスタート!」で1秒でも早く全員に回します。何回かチャレンジするうちに、時間が短縮され自分たちの設定した目標タイムに近づくと、歓声と拍手が沸き起こりました。同じ要領で、片膝ずつたたき隣へと連動していく【音のグラデーション】は、耳をすませ、神経を集中させ、隣の音を聞き素早くたたく。この頃には、受講者さんの動きにも機敏さが・・・
 身体がめざめてきたところで外に出て、遊び全開!!
 いくつかの遊びと様子を紹介します。

6人で、隣でない人と右手、隣でなく右手もつないでない人と左手をつなぎ、絡まり合った手をほぐし輪にする】
 「隣じゃない人だら…」 「はれ、手が1本余っとるよ~」 まず、指定された手のつなぎ方に悪戦苦闘。こんがらがった手をどうやってほぐしましょう。自然と司令塔となる人が、声をかけます。 「1番上の手の人がくぐってー」 「みんな低くなって!」 スムーズに輪になったグループは、他のグループの助言に向かいます。 「な~んだ、1人うしろ向いとってもいいのか…」 「できた!!」

【1人が擬態語(「トントン」「ブルブル」等)をジェスチャーで表現し、グループの仲間が当て、数を競う】  「エー、どうやろう?!」 「カンカン?なに?」 普段あまりやらない大きな動きが飛び出します。 「すごい!よくわかるな~」 「パスパス!」 「キャ~いそげ~」 知らず知らず夢中になり、グループの連帯感も高まります。


【ペットボトルの中にある物を、音を聞いて想像しグループで捜してくる】
 みんなで耳をすませて音を聞き、空のペットボトルを持って林の中にgo! 「もっと軽い音かな?」 「これじゃない?」 「もう一回音を聞かせて」 「う~ん違うかな~」 「似とる似とる!これだよきっと」 「松ぼっくり、正解?」 「ワ~イ!」


【スケッチブックに貼られた枝や葉、木の実の構図を一定時間で覚え、力を合わせて同じ物を作る】
 「分担して覚えまい」 「私ここだけ覚えるで!」 智恵を集めて分担作業。 「四つ葉のクローバーなんてないに…」 「くっつけりゃいいんな!!」 何の迷いもなく・・・さすがベテラン。 「もっと赤い葉っぱじゃなかった?」 「この葉っぱの向きどっちだっけ?」 「若い人覚えとるかなあ」 「わからん」 「・・・」 「やっぱり違っとった」 「惜しい!」 「記憶っていいかげんなもんだな~」

 3時半ともなると、さすがに山は肌寒く上着が欲しいくらいでしたが、受講者のみなさんの感想には、“楽しかった!” “リフレッシュできた” “久々に童心にかえって夢中で遊べた” “さっそく明日から使いたい” とキラキラした言葉が綴られ、古屋先生の「遊び心や楽しむ心が大切」というメッセージをしっかり受けとめて帰られました。
 自然の中に身をおき、受講仲間の皆さんと大声で笑い、話し、パワーの充電をした半日でした。

10.23.2008

「もったいない」から生まれた職人技 ~『まちかど博物館 裂き織り講座』~

 10月5日に『親子で体験裂き織り講座』が開催されました。これは『まちかど博物館』事業の職人講座で、飯田で伝統の技を受け継ぐ職人さんに、親子(小学校高学年)を対象に職人さんの技術を体験させてもらい、飯田の良さを再発見してもらったり親子の触れ合いを大切にしたいとの思いで始まり、今年で3年目になります。

 今回は、講師にこの道30年の裂き織りの達人 田中百合子さんを迎え、親子でオリジナルのランチョンマット作りに挑戦です。初回は全員が田中さんに「裂き織り」についてのお話を聞き、1組ずつ日程を変えて裂き織りの体験をさせていただきます。
 『裂き織り』とは、古くなった布を細く裂いて糸にして織り込んだ平織りのことです。江戸時代、貧しかった庶民が始めたと云われています。
 体験の場所は、講師である田中百合子さんの自宅です。「まちかど博物館」の看板の掲げてある玄関を入りお部屋におじゃますると、テーブル掛けやマットなど裂き織りで作った田中さんの作品が至るところに見られます。床の間や壁には季節の花や掛け軸が飾ってあり、お部屋を拝見するだけでも田中さんが季節感を意識したり、手作りやモノを大切にする生活を送られているのが伝わってきます。さすが職人さんです。
 バックやこたつ掛け、さらには背広の作品もあり、「ワーすごい!」「裂き織りでここまで出来るんですか?」「ステキな生活ですね~」とお母さん達も絶賛です。
「布だけじゃなくて、とうもろこしの皮や竹でも作れますよ。いろいろ試してみてくださいね。」と田中さん。

 田中さんのお話が終わった後は、体験で使う古布選びです。
 世界に一つだけの自分の作品を作るとあって、子どもたちもお母さんも自分が気に入るまでじっくり選んでいます。
 「5ミリ位の幅に裂いてみてください。縦に裂くと簡単に裂けますよ」と田中さん。
 「あれ?ちょっと堅いな。」「縦と横が違うみたいよ。」お母さんたちが子ども達に「上手に裂けるね、ちょっと教えて。」こんな会話をしながらだんだんコツを覚え、最初はたどたどしかった布を裂く音が「ピーッ!」と気持ちのよい音に変わってきました。布がこんなに簡単に裂けるとは驚きです。

 布が裂けたら、さっそくトップバッターの体験者Mさん親子が裂き織り体験です。
 織り機が1台のため、まずはお子さんからです。「よこ糸を通したら、右足を踏んで・・・」田中さんの指導にAちゃんはすぐにコツを覚えて、両手と両足を上手に使って織っていきます。「そうそう!その調子よ!」田中さんが応えます。
 途中で使っていた布が終わってしまい、同じような模様の布を使いましたが、微妙な色の違いが味があってとてもステキです。
 約1時半ほどで作品が完成しました。「上手だね~。綺麗に仕上がっているよ。」お母さんや田中さんの言葉に、Aちゃんは大満足の笑顔です。

 続いてお母さんがチャレンジです。お母さんが織っている隣でAちゃんが心配そうに覗き込んでいます。時々何かお母さんに話しては、アドバイスしているようです。2人とも時折顔を見合わせてはにっこり。親子の時間が流れます。

 お母さんとお子さんの世界に一つだけのランチョンマットが出来上がりました。田中さんも、2人の出来栄えに大満足の様子でした。
 講座の様子について、参加されたお子さんの小学校へ写真などを展示する予定です。
着古した着物を上手に使いまわし「使えなくなる」まで使っていた昔の人の生活を考えると、現代の使い捨ての生活が本当の豊かさではない、と感じてしまいます。

 職人講座では、今年度、座布団や提灯作り体験を予定しています。飯田で伝統の職人技を守り、子ども達へ伝えていただける職人さんを今後も募集していますので、情報をお寄せください。

10.15.2008

「こんにゃく切れないし・・・」 下伊那農業高校 ひさかた御膳づくり

 古くから飯田市下久堅柿野沢地区に伝わる「ひさかた御膳」の御品書きです。

 下伊那農業高校アグリサービス科1年生の生徒の皆さんが、9月の事前学習を経て10月4・5日の2日間にわたり「ひさかた御膳づくり」体験の本番を迎えました。
 体験教室は、2日間で約20人ずつ午前・午後・午前・午後の4回にわけての実施です。
 前日、40kmあまりの強歩大会を「完歩」してきた生徒さんたち。
 「こんな筋肉痛ありえない!」
 と、足を引きずりながらのチャレンジです。

 講師の柿野沢生産組合婦人部の皆さんは、年間2000食以上を手がけるプロの皆さんです。生徒たちの役割も事前に分担できていたため、とても手際よく調理が進められていきます。
 「こっちあいてるよ!お米つぶすときは、両方の手で腰をこうやるんだに!」
 さっそく五平餅づくり担当の婦人部の方から指示が飛びます。
 「そんなに水を入れちゃダメ。やわらかくなっちゃうでな。」
 生徒たちは、初めての経験に戸惑ってばかりです。でも、
 「県外の人たちは見本を見せてもなかなかできんに。作ったことはなくても、見たことがあるってやっぱ違うなぁ。」
 と、お褒めの言葉をいただく場面もありました。

 こんにゃく担当の生徒は、
 「切れないし・・・。マジでこんにゃく初めて切ったし・・・。」
 切ったはずなのに、つながっているこんにゃくを手にしてつぶやいています。
 白和え用の胡桃をすりつぶす作業になると、
 「これ、マジ手でやるの? すりこぎってなに? 胡桃ってどんぐり?」
 「すりつぶしたら、なんかぐちゃぐちゃになってきちゃった・・・」
 最終的にどんなものになるのか、全く予想もつかない様子。
 「うまくできん。うぉ~っ!!」と叫ぶ生徒に、
 「こうやってやるんな。やってみ。」とすかさず入る指導。
 こつを教えていただいて上手にできるようになると、笑顔に変わります。

 上段の調理台では、天ぷらを揚げるいい音がしています。
 「りんごの天ぷらだって~。マジ食べた~い。」
 「これなに~?しいたけ~?」
 黒まんじゅうの天ぷらがしいたけに見えたようです。


 そば茹で担当を名乗り出た男子生徒のS君は、
 「なんで、そばを茹でたいの~?」
 と女子生徒から質問されています。
 「だって俺、そばが好きだから・・・」
 他愛のない会話に、みんなの笑みがこぼれます。

 みそ汁コーナーでも何やらざわついています。
 千切りにしたはずのネギの輪がいくつもつながっていました。
 「まぁ、いっか!えいっ!」
 「そのまんま投入」に婦人部の方も苦笑い。

 終始手探り状態で進んできた調理も、開始から2時間が経過したでしょうか。盛り付けも終わり、ついに「下農製ひさかた御膳」の完成です。
 色とりどりの食材が、鮮やかにテーブルを飾ります。
 「いただきます!」
 多くの生徒が最初に手をつけたのは、りんごの天ぷらでした。
 「甘酸っぱ~!おいしい~!」
 かなり好評でした。
 みそ汁をおかわりする生徒も続出。
 そして、ほとんどの男子生徒はほぼ「完食!」しました。(でも、おばあちゃんやお家の方に五平餅を持ち帰ることは忘れていません。)
 「今の子は、白和えや煮物を食べるのかなぁって思っとったけど、全部食べてくれてうれしいなぁ。ますますやる気がでてくるに。」
 生産組合のみなさんのパワーは、こうして子どもたちからもらっているんだなぁと感じます。

 「今はまだ1年生でおぼつかないところが多いけれど、これを体験することによって、これからの授業に取り組む姿勢が変わってくるんです。料理を作るときに地元の素材に対して思いが強くなったりして、今日の経験が生かされる場面がたくさんあるんです。」
と、先生もこの体験の意義をとても大切に考えておられました。

 短い時間でしたが、地域の伝統食に舌鼓を打ち満喫した生徒のみなさん。おいしくて安心安全の健康食が、身近に存在することを認識できたことと思います。そして、ひさかた御膳を通じて、食文化をはじめとする地域の歴史に思いを馳せたことでしょう。