3.31.2009

『やったー!ボクのちょうちんができたよ!』 ~まちかど博物館ちょうちん作り講座~

“手仕事の達人に弟子入り”第3弾『親子ちょうちん作り講座』が3月23・24日の両日開かれ、抽選で選ばれた5組の児童とお母さん・おじいさんが、初めてのちょうちん作りに挑戦しました。

講師は、長姫町の綿屋提灯店三代目の原章二さんと奥さんの久美子さんです。
まずは原さんから、提灯の材料や種類の話をお聞きしました。昔は材料の90%を飯田で仕入れることができたが、今では提灯和紙やひご、曲げ物(提灯の上下に付いているわっこの部分)を作れる職人さんがほとんどいないこと。お父さんの功美さん(二代目)の「なるべく安く作って、多くの人に提灯を使ってもらいたい」という願いを引き継ぎ、材料代が高騰するなか家族で力を合わせて値段を上げずに提灯作りをしていること。寒い雪の中で繰り返し、ていねいに作られる提灯和紙を例に挙げ、材料を無駄にすることなく使わせてもらって一つの提灯ができることなど、実物を見せてもらいながらお聞きしました。

子どもの頃はサラリーマンの家にあこがれたという原さん。ご自身が親となり子育てをするについて、“飯田のよさ”を感じられ帰郷、家業を継がれたそうです。代々受け継がれた手作りの道具を大切に使われる姿や言葉の端々に、先々代やご両親への尊敬の念がにじみ出て、作業場が温かな空気に包まれます。
受講者の皆さんは、身をのり出して材料を見たり、熱心にメモを取りながら、わからないことはその都度お聞きし、いよいよマイ提灯作りの始まりです。

【ひご巻き】
ちょっと力を抜くとパ~ン!!と全てのひごがはずれてしまうとあって、子どもたちは真剣です。あぐらをかいて力を加減しながら巻いていく子どもの傍らで、保護者の方々も息をつめて、日頃と違う子どもの表情に見入ります。巻き終わると参加者全員が「フ~!」っと力を抜き、巻いた子はバンザイした後、痛い指をさすります。


【紙張り】
ひごを糸で留めた後、タピオカ糊を使い、先々代のおばあさんの指の痕がしっかり刻まれたハケを使って糊を付けます。紙がずれてしまわないよう、塗りもれがないよう原さんに見守られながら、8枚の提灯和紙を貼っていきます。



【文字書き】
「どんな字を書こうか…」提灯を乾かしている間考えた子どもたち。自分の名前の一字や「夢」の字にすることに。「字を書くのがイヤなんだ!」「書道は嫌い!」という子も、久美子さんの認めの言葉に導かれ、力強い、個性的な字型ができました。字型を内側に張り、でこぼこした表面に筆を運ぶ子どもたちの目は、段々職人さんっぽくなっていきます。

【完成】
乾いた和紙のひごとひごの間に、和裁用のヘラで線を引き折り曲げ、原さんに付属の部品と手で持つ棒を付けてもらい完成!! 
どの子も「やったあ~!!」とうれしそう。できあがった提灯を手から離しません。



提灯作りを継ぐことになってから、言葉で教えてもらうことは一切なく、父の斜め後ろから見ながら提灯作りを覚えたという原さん。学生時代からバスケットボールを続け、現在もバスケットのプロリーグの審判員としても活躍されておられる原さんから
「見てコピーできる才能は大切である」
「何でも続けて欲しい」
と子どもたちにメッセージが贈られました。

子どもたちは、一日がかりの講座を通して、それぞれに“伝統文化のこと”“職人さんの思い”“手仕事の大変さ”を感じ、保護者の方に見守られ、原さんに助けてもらいながらも、自分の提灯を作り上げたという達成感を感じてくれたようです。
アンケートには「先生のおかげで、ぼくの良いちょうちんができました。本当にありがとうございました」という感謝の思いと共に、「手間がかかって大変ですが、これからもがんばってください」という、数少ない職人の皆さんたちへのエールが、多くの子どもさんから寄せられていました。

今回の講座の作品と原さんの提灯をはじめ、平成18年度から20年度の『親子体験講座』の受講者さんと職人さんの作品を下記の通り展示致します。是非お出かけください。

日時:4月7日(火)~4月12日(日)午前9時30分~午後5時まで
    ※7日は午後1時から、最終日の12日は午後3時までになります。

場所:飯田美術博物館 市民ギャラリー

内容:職人さんの紹介・作品展示等
     小笠原さん(曲げ物) 稲垣さん(機織り・染物)
     牧島さん(刺繍) 田中さん(裂き織り)
     松沢さん(布団) 原さん(提灯)  
    親子体験講座の受講者作品

3.05.2009

『ふかふかのマイ座布団できたよ!』 ~まちかど博物館 座布団づくり講座~

 2月8日と15日の全2回にわたり『まちかど博物館 いざ!手仕事の達人に親子で弟子入り!第2弾』が開催され、2組の親子が参加して座布団づくりに挑戦しました。
 今回の達人は、諏訪町にある『金山ふとん店』さんの金山社長さんと、妹の松沢登喜子さんです。

 初回は、金山さんに布団と睡眠のことについてお話をしていただきました。
「寝る事は生活の一部です。布団は、自分が明日元気になるための道具なんです。綿も産地によって手触りが全然違うんですよ。」
 と見せていただいたのは、テキサス綿、天津(テンシン)綿、メキシコ綿etc・・・
 子どもたちは綿を触って感触を確かめます。弾力のあるもの、ふわふわしたもの、ちょっと色が濃いもの。一般的に売られている化学繊維から出来た綿とは全く違う、思わずほおずりしたくなるような気持ち良さです。
 綿打ち(布団などの中の綿を細かく繊維にして再生すること)は、今は機械作業だけれど、手作業だったときの昔の道具も見せてくれました。
 お話のあと、松沢さんが、座布団を実際に作って見せてくれました。松沢さんはあっという間に手早く作り上げましたが、見ていた親子の顔には何となく「難しそう・・・」の文字が・・・

 2回目は、東野公民館で、座布団作りに挑戦です。
 ふかふかの触り心地の幻の綿「天津綿」を使って、松澤さんと金山さんが丁寧に教えてくれました。難しいところはお母さんに手伝ってもらいながら、子ども達が作りあげていきます。
 まずは綿を手で切る作業ですが、松沢さんが「手だけを使うんじゃなくて、足も踏ん張ってみて」と子どもたちに声をかけます。慣れない姿勢に(女の子たちなので・・・)ちょっと恥ずかしそうでしたが、作っているうちに夢中になってきたようです。
 綿を重ねていくごとに、手早く作業ができるようになりました。
「少しくらい形が崩れても、綿はまた直せるから大丈夫。」
 と松沢さん。だんだん四角く、座布団の形らしくなってきました。あらかじめお母さんたちが縫ってきてくれた布に綿を入れて、いよいよ完成間近です。
 布の口を縫う作業は、子どもたちも苦労したようですが、松沢さんの「大丈夫、大丈夫。出来るよ。」の言葉と、お母さんにもちょっと力をもらって、2人とも頑張って、最後まで作り上げました。
 出来上がった座布団は、「クッションみたい」と子どもが言うくらい、ふかふかです。「おばあちゃんに作ってあげたい」と話している子もいました。出来上がったばかりのマイ座布団に座り、みんなで記念撮影です。

 次回は3月下旬に提灯(ちょうちん)づくり講座を予定しています。
 伝統の職人技を次世代を担う子ども達へ残していき、親子で飯田の良さを再発見してもらいたい、と始まった『まちかど博物館』事業も今年度3年目となり、4月初旬には、飯田美術博物館の市民ギャラリーに、職人さんの技や作品、親子講座の様子などを紹介する展示をする予定です。
 手仕事の達人たちの魅力を、ぜひ親子で観に来てください。

3.04.2009

『自分の可能性に自分で限界を作らない!』

 3月1日(日)飯田勤労者体育センターに於いて、
『平成20年度TOKYO●2016フォーラム「みんなのオリンピック」~ボクらの街にオリンピックがやってくる!~』
 が、飯田市スポーツ少年団大会と併せて開催されました。

 オリンピック・ロサンゼルス大会で銅、アテネ大会で銀メダルを獲得されたアーチェリーの山本博さんと、パラリンピック北京大会・走り幅跳び銀メダリストの山本篤さんをお招きし、お話を聞けるとあって、子どもたちはもちろん付き添いのお父さん・お母さん、指導者の期待も膨らみます。
 始め緊張気味だった会場も、オリンピックに関わるクイズが始まる頃には大変な盛り上がり。正解者は、オリンピック招致のロゴ(飯田にゆかりの深い水引)入り手ぬぐいがもらえると知り、子どもたちはいかにして自分を当ててもらおうかと、肩車をしたり着ていたジャンバーを振ったり、出題者の両山本さんにアピ-ルします。(後で山本博さんより、「久々にこんな元気な子どもたちに会った!楽しかった!」とお褒めの言葉をいただきました。)

 続いて山本博さんの指導のもと、会場が一体となってストレッチ体操を行い、ストレッチがけがの予防にもなり大切であること、正しいやり方で準備体操やトレーニングをしていくと練習効果があがることを教えていただきました。
 残念ながら出場はできなかったけれど、取材で行った北京オリンピックで見た北島康介選手を例にあげ、「期待の中で成績を出すのは大変なこと。周りの人以上に本人(北島選手)の方が自分自身に期待をしたから、自信と強い信念でプレッシャーに負けず結果を出すことができた。」「スポーツは、どんなに練習したからといって絶対勝てるということがないから素晴らしい。だからこそ練習課程が大切!」と教えてくださいました。

 山本篤さんは、日常用の義足を競技用の義足に付け替えるところから、子どもたちに示してくださいました。山本さんを丸く取り囲み、目の前で競技用の義足が付けられ、体育館の端から端を走り抜ける山本さんの姿を間近で見た子供たち!!
「自分の可能性に自分で限界を作らないで欲しい!」と結んだ山本さんの言葉と共に、子どもたちはしっかりと目と心で何かを刻んだことと思います。

 家に帰って今日の体験を、お家の方にどう伝えるのでしょう。日々の練習で辛い時、日常で悲しいことがあった時、今日の両山本さんの姿が大きな力となってくれると思います。

 体育館の後ろで山本篤さんのご両親とお兄さん方が、息子(弟)の姿を見守ってくださっていました。わざわざ浜松から飯田を訪れてくださった山本さんのご家族にとっても、このフォーラムが『わが家の結いタイム』となってくれたこと、こうした家族の支えがメダリストを育てたのだと改めて感じさせてもらいました。

 いつの日か、飯田の地からも…。