10.15.2008

「こんにゃく切れないし・・・」 下伊那農業高校 ひさかた御膳づくり

 古くから飯田市下久堅柿野沢地区に伝わる「ひさかた御膳」の御品書きです。

 下伊那農業高校アグリサービス科1年生の生徒の皆さんが、9月の事前学習を経て10月4・5日の2日間にわたり「ひさかた御膳づくり」体験の本番を迎えました。
 体験教室は、2日間で約20人ずつ午前・午後・午前・午後の4回にわけての実施です。
 前日、40kmあまりの強歩大会を「完歩」してきた生徒さんたち。
 「こんな筋肉痛ありえない!」
 と、足を引きずりながらのチャレンジです。

 講師の柿野沢生産組合婦人部の皆さんは、年間2000食以上を手がけるプロの皆さんです。生徒たちの役割も事前に分担できていたため、とても手際よく調理が進められていきます。
 「こっちあいてるよ!お米つぶすときは、両方の手で腰をこうやるんだに!」
 さっそく五平餅づくり担当の婦人部の方から指示が飛びます。
 「そんなに水を入れちゃダメ。やわらかくなっちゃうでな。」
 生徒たちは、初めての経験に戸惑ってばかりです。でも、
 「県外の人たちは見本を見せてもなかなかできんに。作ったことはなくても、見たことがあるってやっぱ違うなぁ。」
 と、お褒めの言葉をいただく場面もありました。

 こんにゃく担当の生徒は、
 「切れないし・・・。マジでこんにゃく初めて切ったし・・・。」
 切ったはずなのに、つながっているこんにゃくを手にしてつぶやいています。
 白和え用の胡桃をすりつぶす作業になると、
 「これ、マジ手でやるの? すりこぎってなに? 胡桃ってどんぐり?」
 「すりつぶしたら、なんかぐちゃぐちゃになってきちゃった・・・」
 最終的にどんなものになるのか、全く予想もつかない様子。
 「うまくできん。うぉ~っ!!」と叫ぶ生徒に、
 「こうやってやるんな。やってみ。」とすかさず入る指導。
 こつを教えていただいて上手にできるようになると、笑顔に変わります。

 上段の調理台では、天ぷらを揚げるいい音がしています。
 「りんごの天ぷらだって~。マジ食べた~い。」
 「これなに~?しいたけ~?」
 黒まんじゅうの天ぷらがしいたけに見えたようです。


 そば茹で担当を名乗り出た男子生徒のS君は、
 「なんで、そばを茹でたいの~?」
 と女子生徒から質問されています。
 「だって俺、そばが好きだから・・・」
 他愛のない会話に、みんなの笑みがこぼれます。

 みそ汁コーナーでも何やらざわついています。
 千切りにしたはずのネギの輪がいくつもつながっていました。
 「まぁ、いっか!えいっ!」
 「そのまんま投入」に婦人部の方も苦笑い。

 終始手探り状態で進んできた調理も、開始から2時間が経過したでしょうか。盛り付けも終わり、ついに「下農製ひさかた御膳」の完成です。
 色とりどりの食材が、鮮やかにテーブルを飾ります。
 「いただきます!」
 多くの生徒が最初に手をつけたのは、りんごの天ぷらでした。
 「甘酸っぱ~!おいしい~!」
 かなり好評でした。
 みそ汁をおかわりする生徒も続出。
 そして、ほとんどの男子生徒はほぼ「完食!」しました。(でも、おばあちゃんやお家の方に五平餅を持ち帰ることは忘れていません。)
 「今の子は、白和えや煮物を食べるのかなぁって思っとったけど、全部食べてくれてうれしいなぁ。ますますやる気がでてくるに。」
 生産組合のみなさんのパワーは、こうして子どもたちからもらっているんだなぁと感じます。

 「今はまだ1年生でおぼつかないところが多いけれど、これを体験することによって、これからの授業に取り組む姿勢が変わってくるんです。料理を作るときに地元の素材に対して思いが強くなったりして、今日の経験が生かされる場面がたくさんあるんです。」
と、先生もこの体験の意義をとても大切に考えておられました。

 短い時間でしたが、地域の伝統食に舌鼓を打ち満喫した生徒のみなさん。おいしくて安心安全の健康食が、身近に存在することを認識できたことと思います。そして、ひさかた御膳を通じて、食文化をはじめとする地域の歴史に思いを馳せたことでしょう。

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