2.25.2008

キャリア教育シンポジウムを開催しました。

 2月15日(金)。
 飯田市キャリア教育推進実行委員会では、飯田市鼎文化センター3階においてキャリア教育シンポジウムを開催しました。

 講師に立教大学経済学部の廣江彰教授をお招きし、「地域に存在感を持ち、地域から尊敬される企業としての『キャリア教育』の価値」と題した基調講演をいただき、企業の側からキャリア教育がどう考えられるかという視点で、様々な事例を提示していただきながらお話いただきました。
 講演の中で先生は、
 「私たちはキャリア教育ではなく“コープ教育”と呼んでいる。コープとは協働という意味。キャリア教育は、学校が企業にお願いして実施するべきものではない。家庭も地域も企業も学校もそれぞれ解決すべき課題がたくさんあり、それをキャリアという視点で捉えて皆で解決していくことが重要である。」
 「子供たちに“箱庭”を用意する必要はない。予期しない問題がおきて、それをどう解決するかという力を育むために、社会とのつながりの中でリアルな体験が必要である。」
 「企業は生まれながらにして地域の一員であり、社員が地域のために働くことで人々から感謝される。それが社員の仕事のやる気を引き出し、そして優秀な人材が集まる。顧客や取引先の信頼も高まる。ということを理解すべきである。」
 ということを強調されました。

 続いて、飯田西中学校2年生の生徒たちによる「連続5日間の職場体験学習」の実践発表がありました。
 飯田西中学校では、9月に“西中チャレンジweek”として、1年生は農業体験、2年生は連続5日間の職場体験、3年生は地元風越山において林業体験を実施しました。今回の発表は、2年生の職場体験学習の成果です。
 行政機関、飲食店、スーパーで体験した3人の生徒から、この体験を通じて印象に残ったこと、学んで成長したこと、自分にとって「働く」とはどういうことか、そして、これからの自分の課題について発表がありました。
 飲食店で体験したSさんは、「4日目に、次から次へと注文が入って上手に盛り付けができなくなったとき、お店の人に「焦らなくて大丈夫!自分に出されたときどんな盛り付けだったら気持ちよく、美味しく食べられるか考えてみな!」といわれ、「お客様のことを一番に考えよう!」と思った。この体験を通じて人の役に立つうれしさを知り、人のために働けるようになった。そして明るくあいさつができるようになった。」と、自分が成長した成果を分析し、発表していただきました。

 最後に、実際の受入れ事業所の皆さんによるパネルディスカッションです。
 経営コンサルタントのHさんのコーディネートのもと、市街地商店街の文具店経営者、高級婦人服製造業経営者、特別養護老人ホーム施設長、それぞれのパネリストから、実際に職場体験学習の受入れをしている現場の生の声をお聞きしました。また、飯田西中学校の校長先生にも、学校の代表としてパネリストに加わっていただきました。
 冒頭校長先生からは、
 「地域を担う人材になってほしいという思いを強く持っている。体験活動を通じて地域を考える人になってほしい。また、学校から離れた環境の中で自分をしっかり見つめて、そして学校に帰ってきてほしい。」
と語られました。
 続いて受入れ事業所の皆さんからは、
 「正直にいえば、社内に素人が入ってほしくないというのが本音。生徒の受入れは、会社にとって目先のメリットはない。ただ子供たちには、飯田にはこういう仕事があるということを知ってもらいたい。そして、将来飯田に帰ってきて就職してほしいという期待を抱いているから受入れをしている。」
 「社員が、生徒にわかるように仕事を教えてあげる。これが自分自身の仕事、役割を再認識するなど社員教育にもつながっている。」
 「中心市街地から人手が遠のいている今、職場体験学習は、当社だけでなく街を知ってもらう良い機会と捉えている。こういうことを通じて親しみを感じてもらいたい。」
 「かつて、職場体験学習でうちの施設にきた子供が、大きくなって就職してくれた。職場体験を通じて、福祉の世界に志のある子供を育てたい。」
 など、様々なご意見をいただきました。

 最後に廣江教授から、
 「子供たちには経験、驚きが必要。プロの仕事ってこんなにすごいのか!店で物を売るときにこんなことを考えているのか!という驚きを引き出すような働きかけが必要である。そのためには、プロトタイプを作って本当のプロとはどういうことをしているのかということを教える必要がある。そして、子供たちに課題を発見させて、解決させる能力を育てることが重要。飯田にはそういう体験ができる土壌がたくさんある。それらを活かして「飯田型キャリア教育」を構築していくべきだ。」
 と、まとめていただきました。

 このシンポジウムが、受入れ事業所の皆様の悩みや苦労を解決するヒントになればと実行委員一同願っています。

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