2.05.2009

『キャリア教育は、生涯を見通した教育』

 1月23日、飯田人形劇場に於いて、『飯田市キャリア教育推進フォーラム ~大人への一歩 社会へ挑戦~ 』が開かれました。
 5日間の職場体験学習を経験した飯田西中学校2年生の生徒が、受付、舞台の配置転換、司会を担当。直前までリハーサルを積み、そしていよいよ本番を迎えました。
 受付を担当した生徒は、「お迎えする」というおもてなしの心を込めて、来場者にハキハキと声をかけています。
 体調を崩してしまった生徒のピンチヒッターとして、急遽加わった生徒もいました。リハーサルではどう動いていいかわからない様子でしたが、本番では整然と協力して指示されることなく配置転換をこなしています。
 司会者の生徒2名は、130人余りの参加者をまっすぐみつめ、背筋を伸ばし、堂々と一つ一つの言葉を大切にしながら会場中に響かせています。
 生徒一人一人が、今の自分の役割をしっかり認識し主体的に動いている。見ている大人も圧倒される程の“自信に満ちた姿”がそこにあり、まさにこれこそが「キャリア教育」のねらいであると再認識させてもらいました。

 飯田西中学校では、5日間の職場体験の事前・事後学習を大切にしています。自分が何を学びたいのか、何に挑戦するのか、明確にすることで自分をみつめ、丁寧に振り返り、友だち同士発表し合うことで学んだことがより自分のものとなり、友だち同士励まし認め合うきっかけにもなっています。
 フォーラムの前半では『自分の将来に向けて』と題し、6名の飯田西中学校の生徒が自分の言葉で体験発表をしました。
「自分にとって働くとは・・・」
・協力し合うこと
・いないと困る人になること
・人の役に立ち、自分も楽しくなること
・自分の長所を存分に発揮すること・・・そのために自分の個性をたくさんみつける。
 日々忙しく働く私たち大人も、改めて大切なことに気づかせてもらいました。同時に、生徒たちの発表から、5日間という大変だったけれど貴重な体験から学びとり、そこからみえてきた自分の課題に向けて、一日一日を大切に勉強していこうという意欲が伝わってきました。

 続いて、千葉大学教授「上杉賢士」先生の基調講演です。
 上杉先生が、とあるキャリア教育に関するフォーラムに参加され、パネリストとして参加していた著名人の発言をご紹介いただくことから始まりました。
 そして、自分の将来をしっかり歩いていくためには、「自分てステキ! 自分て大切!」という自尊感情をエンジンにして、「自分のことは自分で決める」という判断力をハンドルにして、歩くことが大切である。この2つを、小さなうちからしっかりと育てていくことが大切であるということを教えていただきました。
 そのためには、子供たちが家庭と学校だけではなく、いろいろな人と関わり体験することが大切である。殊に職場体験学習については、仕事や職場というリアルな場所で多様な人間関係を体験することができる貴重な体験機会であることを強調されながら、
「「働く大人って美しい!」と実感させてやってください。「大人ってすごいな!」って圧倒してください。」
 と主張されました。そして、「少年は、必要とされてはじめて大人になる。あなたがいてくれてよかったと伝えてあげれば、若者は元気になる。「キャリア教育」とは「=生涯教育」である。」とまとめていただきました。
 課題の多い現代だからこそ、子どもたちの何を育てることが大人の、そして社会の役割なのか。考えるきっかけをいただいたように思います。

 最後のパネルディスカッションでは、パネリストの面々の本音をお聞きすることができました。
 5日間の子供の変化が見て取れて非常に良かったという保護者の立場からの感想や、職場体験の中で「世に出ると学問が必要だよ。今の勉強が将来きっと役に立つよ。」ということを見せてあげたという会社の社長さんのお話がありました。
 一方で、5日間の職場体験の効果や意味はわかるが、大人数ゆえにどうしてもできないという大規模校の事情や、「全員が一律に5日間やれというのは無理。ゆるやかな個々の対応が必要なのでは・・・」という会場からの意見もあり、これからのキャリア教育の進め方について、改めて考える必要があることを確認できました。

 会場中の大人が、飯田の未来を担う頼もしい中学生に、心の中で温かなエールを送りながら進められてきたこのフォーラムも、成功裏に終演を迎えました。
 私たち大人は、子どもたちに「かっこいい」「すごいな」「圧倒される」と思われているのでしょうか。次代を担う子どもたちのために、自分にできることは何なのか。改めて問い、自身の姿勢を正されるフォーラムであったように思います。

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